DrIWAの日記

医療や地域や人や趣味について。日々わくわくすることを探しています。日々の記録として書いていきます。

飯塚病院 パート②

飯塚病院 連携医療・緩和ケア科

前回に引き続き飯塚病院の訪問記録になります。今回は連携医療・緩和ケア科です。私の主観ですが、日本一アグレッシブで、先進的で、活気ある緩和ケア科です。

現在、飯塚病院連携医療・緩和ケア科で活躍されている石上先生は熊本赤十字病院救急科時代の同期になります。共に熊本地震で被災し、共に災害医療を行ったとても優秀な救急医ですが、私に緩和ケアの魅力を教えてくれた大切な友人でもあります。久しぶりの再会で、さらにパワーアップした姿を見ることができ刺激になりました。

 またこの日は鹿児島県立大島病院の山端先生も見学に来られていました。緩和ケアの必要性をひしひしと感じている救急医3人、なんだか嬉しくて一緒に記念撮影をさせてもらいました。

 

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飯塚病院の緩和ケア医の仕事

みなさんは緩和ケアという分野にどんな印象を持っていますか?

末期癌患者を麻薬、鎮静剤を使って看取る医療?

治療の手段がなく主治医から見放された人への医療?

私も「救急×緩和ケアセミナー」に初めて参加した2019年まではそんなイメージでした。恥ずかしながら、それまでは救急と緩和は真逆の位置にある診療科だと思っていました。前回の記事でも触れましたが、救急/集中治療や緩和ケアは、循環器や消化器などのように臓器別に分類されない、病期(時間軸)をみる貴重な診療科になります。外傷だろうが、心疾患だろうが、精神疾患だろうが突然悪くなった方は救急医が力を発揮できる(しなければならない)患者さんです。これは緩和ケア医も同様で癌だろうが、心不全だろうが、認知症だろうが人生の終末期を迎えている方は緩和ケア医がマネジメントできる患者さんです。急性期/終末期の時間軸が違うだけで、実は非常に親和性が高く、同一のマインドを持つ分野になります。

緩和ケア科へのコンサルトは幅広く、飯塚病院では救急車で来院した患者さんを救急医が初療し、救急外来で緩和ケア医にコンサルト、というような場面も多くみられます。 ホスピス的な緩和ケアをイメージしている医師からすると異様な光景にもみえます。この日は、急性動脈閉塞で手術適応とはならなかった90代の患者さんのコンサルトが救急外来からありました。また、集中治療チームからは重症疾患で気管挿管中の患者さんの今後の治療(decision making)の相談がありカンファレンスに同席しました。

この高齢化社会の中で『人生の終末期』と分類される方は決して癌患者だけでなく、心不全誤嚥性肺炎、認知症やその他非癌の患者さんの割合が非常に大きくなっています。そして、非癌の患者さんは終末期であっても終末期と認知されないことも多くあり、患者本人や家族、時には医療者までも適切な対応や受け入れができないことがあります。

だから、いま、緩和ケアなのでしょう。

 

シミュレーション教育、実践教育

それはそれは手厚い指導体制がとても印象的でした。毎週、zoomを用いた医療面談シミュレーションがあり、Bad Newsの伝え方などをまずは模擬患者さんで勉強します。実際に行った自分の説明を録画された動画で確認しながら多数の指導医からフィードバックを受けて実臨床に活かします。

実際の患者さんへの病状説明ももちろん行いますが、その前後には必ずスタッフから説明内容のチェックを受けます。単なる経験則での指導ではなく、データやスキルを用いたフィードバックがふんだんに織り交ぜられています。

患者さんへの説明や対応は今でこそ系統的なスキルが存在しますが、一昔前はなかなか教わる機会がなかったもので、しかも大抵の医師が『自分は苦手ではない』と思い込んでいる節のある非常に危うい分野だと感じています。「プライベートの時間を削ってでも、先輩を見て学べ」というような、悪しき風習が残る病院もまだあるのではないでしょうか。飯塚病院の教育システムを見る中で、「見て学べ」を実践すべきなのは、教育を受ける側ではなく、教育を提供する側だと痛感しました。教育体制や、専攻医募集に苦慮している病院はぜひ一度見学に行かれることをおすすめします。

 

つたない文章で、魅力を伝えきれたか不安ですので、興味がある方はぜひページをのぞいてみてください。

 連携医療・緩和ケア科 | 飯塚病院 (renkei-kanwa.com)

見学や研修も常時受け入れているようです。終末期ケア医としての能力だけでなく、総合的な『医師力』を間違いなく上げることができると思います。(私もまたゆっくり勉強に行きたい・・・)

 

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とりあえず、熱の冷めぬうちに私はこの本を読みなおしました。