DrIWAの日記

医療や地域や人や趣味について。日々わくわくすることを探しています。日々の記録として書いていきます。

夜明けに胃潰瘍の出血が止まると、小鳥のさえずりが聞こえてきました。

小鳥のさえずりで目を覚ます、新しい生活様式

上五島にきたときに感じた環境変化のひとつが、『自然の音』です。

 

朝は目覚ましのアラームより先に鳥達のさえずりが心地よく家の周囲に響き渡り朝を知らせてくれます。なんとも優雅な気持ちで朝を迎える事ができています。

その他にも、波の音や虫の声、風の音、よく分からない動物の鳴き声(笑)などが日常の中に溢れています。

こちらにきた日に、「上五島って自然の音がすごいね」という話を妻や子供達としてから早くも3ヶ月がたとうとしています。

 

こんな環境が当たり前になってきそうな時期ですが、改めて、精神的にも子供達の感性のためにも恵まれたこの環境での生活に感謝したいと思います。

 

夜中の吐血

こちらに来てからは、内視鏡もさせてもらってます。

熊本で救急医をしてたときに消化器内科で胃カメラ、大腸カメラを勉強させてもらいましたが、ブランクも長く、技術もまだまだなので日々勉強中です。

 

そんなある日、夜中に大量の吐血の患者さんがきました。

多発胃潰瘍による吐血です。

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夜明け頃になんとか止血。

内視鏡画面の血柱もなくなり、胃の中の血溜まりの水面にもようやく静寂が訪れます。

 

その場にいた医師、看護師は心身ともに疲弊した状態でしたが、そこに内視鏡室の裏庭から、いつものように小鳥のさえずりが聞こえてきました。

それに呼応するように心拍モニターのスピードも緩やかになります。

血液や輸血の空パックがいたるところに見られる戦場さながらのシチュエーションに、なんとも穏やかな朝を知らせる合図です。

 

戦争映画やタイタニックのエンディングのような(詳しくは覚えていませんが)、そんな朝でした。

 

地域で完結できる医療の範囲は何で決まるか

ちなみに、翌日に再出血し、もはや内視鏡での止血は困難となったため、

ICU気管挿管して

→REBOA(IABO)を入れて血圧を保ちながら

→開腹での止血となりました。

とても勉強になりましたが、肝のひえる症例でした。

 

外科手術や心筋梗塞などが上五島病院で完結できることは、そこで働く医師として、何より住民として有難いことです。

 

上五島エリアはとてもバランスよく医療範囲が設定されているように感じますが、私自身、それほど多くはないながらも日本各地のへき地医療をみてきた中で、その地域においてどこまでの医療体制が必要かということはとても難しい問題だと感じます。

 

新型コロナのパンデミックが教えてくれるのは、地域においての医療と経済(+教育)の両輪の大切さです。

どちらが欠けても、バランスを間違えても地域の持続的な発展(医療も経済も)はなくなります。

 

医師としては地域住民の為に、

「医療体制を守れるように!更に体制を拡充できるように!」と思いますが、少なくとも経済が衰退しているもしくは子供が減り人口が減少していっている地域においては、今以上に手厚い医療体制をしくことはとても難しく感じてしまいます。

 

 

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住民の幸せのためには、医療だけでなく職種をこえた、また市町村、県単位での「俯瞰的な視線の共有」が必要だなと、小鳥がさえずる日本の片隅でのんびり考える日曜日です。