涙のターミナルケア 〜アオムシ篇〜
アオムシを飼う
ある日、長男がアオムシを連れて帰ってきました。アオムシを育てることが小さな夢だったようで、その理由は幼い頃から何十回も読んできたこの絵本のようです。
「はらぺこあおむしを育てて蝶にする!」と意気込みます。何やら嬉しそうに虫かごに葉や羽化用の割り箸をセッティングしていました。
言わずと知れた『はらぺこあおむし』。
我が家は夫婦ともども、また三兄弟みんなお世話になった名作絵本です。
私と同じくらいの年齢で同じ本を読んで、同じように感性をくすぐられている姿がとてもほほえましく、彼のアオムシの飼育を少し遠くから見守ることにしました。
時々虫かごを持って外にでかけていくので、気になってその理由を尋ねてみると、
「たまには外が見たいだろうから散歩させてるの」とドヤ顔で答えてきます。
じゃあ逃してやれよ、と思いながらも決して口には出さずに遠くから見守り続けました。(笑)
待望の羽化と事件
順調にサナギになり待望の羽化を迎えましたが、その時事件は起こりました。
羽化の途中で地面に落ちてしまい羽が広がらなくなったのです。飼育を見守る親としてもショックは大きく手助けしたい気持ちもありましたがぐっと堪えて。小学生になった彼がどう対応するかも気になり見守りを続けます。。。
こちらが戸惑うほどの大号泣。蝶が可愛そうと咽び泣くその姿に、今の自分には少なくなってきている感性を見た気がして不謹慎ながら嬉しくもあり。
そんな絶望に打ちひしがれる息子に、妻がひとつだけ助言をします。
「蝶のためにできることを考えてあげて」
ターミナルケアは突然に
親も経験したことのない蝶へのターミナルケアが始まりました。こどもたちは本などで蝶の生態を調べ、花を摘んできてきたり、蜂蜜を薄めた栄養補助薬を与えたりと知恵を絞りなんとか一命はとりとめました。
しかし羽は開くことなく、徐々に弱っていくのが目に見えます。
長くないであろう残された時間をどうするかという課題に直面し、彼が出した答えは、もとの場所に戻してあげる事でした。
またまた涙と一緒にお別れですが、家路に向かう息子の背中は一回り大きくなったような気がしました。
考える課題や解決の過程を教えてくれたはらぺこあおむしに感謝です。息子は塾に行くよりも、高い教材を買うよりも大切なものを学ぶことができたようです。
飛ぶ蝶は綺麗で、飛べなかった蝶は可愛そうですがその両方が自然です。人の都合で綺麗や残酷や評価するのもよくないのかもしれません。
普段美しく、時に残酷な災害をもたらす自然も同じです。
毎年のように起こる自然災害に心が痛みます。新型コロナと同じように自然災害ともうまく共生できると良いのでしょうがなかなか難しそうです。
これ以上被害が増えないことを切に祈っています。
三男はカエルの真似をしてカエルに話しかけています。きっと相手の気持ちを理解する第一歩。
次はオタマジャクシの飼育かなと、心の準備をしておきます。